ワキガのニオイの種類と特徴
ワキガ(腋臭症)のニオイは、アポクリン汗腺から出る汗に含まれるタンパク質や脂質が、皮膚の常在菌によって分解されることで発生します。しかし、分泌物の成分バランスや、繁殖している常在菌の種類によって、発生するニオイには個人差があります。
「ネットで言われているようなニオイとは違う気がする」「自分のニオイは特殊なのでは」と不安に思われる方もいらっしゃいますが、実はワキガのニオイは大きく分けて以下の4つのタイプに分類されます。
それぞれの特徴を知ることは、ご自身の状態を正しく理解し、よりご自身に合った適切なケアを見つけるための第一歩となります。
| ニオイのタイプ | 特徴の例え | ニオイの強さの傾向 |
|---|---|---|
| スパイス・カレー系 | クミン、ネギ、玉ねぎ、香辛料 | 強い(拡散しやすい) |
| ミルク・チーズ系 | 古いバター、チーズ、発酵臭 | 中〜強い |
| 鉛筆の芯・鉄系 | 鉛筆の芯、金属、ホコリ | 弱い〜中 |
| 酸っぱい・お酢系 | お酢、納豆、ツンとするニオイ | 弱い〜中 |
1. スパイス・カレー系(硫黄化合物)
ワキガのニオイとして最も代表的で、クミンなどの香辛料や、ネギ、玉ねぎに似たツンとした刺激臭が特徴です。
アポクリン汗腺から分泌される汗に含まれる「タンパク質」や「アミノ酸」が、皮膚に常在する細菌(主にコリネバクテリウム菌など)の働きによって分解される過程で、「硫黄化合物」が生み出されることが原因です。この硫黄化合物は揮発性が高く、空気中に拡散しやすい性質を持っているため、周囲に広がりやすいという傾向があります。
2. ミルク・チーズ系(脂肪酸)
古いバターやチーズのような、モワッとした特有のニオイが特徴です。
アポクリン汗腺から分泌される汗の中に「脂質」成分が多く含まれている場合、それが皮膚の常在菌によって分解・酸化されることで「短鎖脂肪酸」という物質に変化します。これが発酵臭のようなニオイの正体です。肉類や乳製品など動物性脂肪の多い食生活を続けていると、この脂質の分泌量が増え、ニオイが強くなる要因となると考えられています。
3. 鉛筆の芯・鉄系
比較的軽度のワキガの方に多く見られるのが、鉛筆の芯やクレヨン、古い鉄を連想させる少し金属的なニオイです。
このにおいは、アポクリン汗に含まれる特定の「脂質成分」が、時間の経過とともに空気に触れて酸化したり、皮膚の常在菌によってゆっくりと分解されたりする過程で発生するものと考えられています。他のタイプ(硫黄化合物など)に比べると揮発性が低く、ニオイの拡散力は弱いため、衣服を脱いだ時や脇に直接鼻を近づけた時にご自身で気づくことが多いのが特徴です。
4. 酸っぱい・お酢系
お酢のようにツンと鼻を突く酸っぱいニオイです。
このニオイは、ワキガ特有のアポクリン汗腺からの分泌物だけが原因ではありません。全身にある「エクリン汗腺」から出る通常の汗(水分と塩分が主成分)や皮脂が脇の下で混ざり合い、高温多湿な環境を作り出すことで、皮膚上の雑菌が急激に繁殖します。その雑菌が汗や皮脂を分解・発酵し、酸化させる過程で「酢酸」などの酸性物質が生み出されるため、このようなツンとしたニオイが強くなります。
なぜ人によってニオイの種類が違うの?
同じ体質でもニオイの傾向が異なるのには、主に3つの理由があります。
生まれ持った体質
アポクリン汗腺から分泌される成分(タンパク質、脂質など)の割合には、個人差があります。
皮膚の常在菌のバランス
脇の下に存在している細菌のバランスによって、作られるニオイ物質が変わります。
食生活や生活習慣
肉類や脂っこい食事などは、皮脂腺やアポクリン汗腺を刺激し、ニオイの元となる成分を増やしてしまうことがあります。
毎日のケアで、不安のない健やかな肌へ

どのタイプのニオイであっても、基本となる対策は「清潔を保つこと」と「菌の繁殖を抑えること」です。
- こまめに汗を拭き取る
汗をかいたら、濡れタオルや汗拭きシートで優しく拭き取りましょう。こすらず、押さえるように拭くのが肌を傷つけないポイントです。 - 肌環境を整えるデオドラントを使う
ご自身の肌に密着し、長時間しっかりと殺菌・制汗できるクリームタイプなどが有効です。 - 食生活を少しだけ意識する
動物性脂肪を少し控え、ビタミン豊富な野菜を取り入れるなど、内側からのケアもニオイの軽減につながります。
ニオイの悩みは、誰にでも相談できるものではなく、お一人で深く抱え込んでしまう方が多くいらっしゃいます。ご自身のニオイの傾向を知ることで、「正体」がわかり、少しでも心が軽くなれば幸いです。丁寧なセルフケアを続けても悩みが晴れない場合は、皮膚科などの専門機関を頼ることも、解決への大切な選択肢の一つです。
※ご注意 本記事は、生活習慣に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の医療的効果や症状の改善を保証するものではありません。内容のご利用にあたっては、あらかじめご了承ください。
美容皮膚科・美容外科医
1999年東海大学医学部卒業、順天堂大学大学整形外科医局入局。2005年より順天堂大学麻酔科医局入局し、ペインクリニックで整形外科関連の痛みに関する治療を学び、麻酔科標榜医取得。








