更年期に多いデリケートゾーンの乾燥問題
年齢を重ねると、これまで気にならなかったデリケートゾーンの“乾き”や“かゆみ”を感じる方が増えてきます。
顔やボディと同じように、デリケートゾーンの肌や粘膜も年齢の影響を受けるからです。実は、更年期以降の女性の多くが経験する自然な変化なのです。
なぜ乾燥しやすくなるの?「鍵はエストロゲンの減少。」

更年期にさしかかると、女性ホルモンのひとつ「エストロゲン」が大きく減少していきます。エストロゲンは、膣や外陰部の粘膜をふっくらと保ち、潤いをキープするための“うるおいホルモン”ともいえる存在。これが少なくなることで粘膜は薄くなり、分泌も減り、少しの摩擦でも乾きやすく、ヒリつきやかゆみを感じやすい状態へと変わっていきます。
さらに、ホルモンの低下は膣内のpHバランスにも影響を与えます。普段は弱酸性に保たれている環境が中性に傾きやすくなり、肌を守る常在菌(乳酸菌)が減少。自浄作用が弱まることで、刺激を受けやすく、不快感につながるケースも少なくありません。
肌そのものの潤いを守る力も年齢とともに低下します。角層のセラミドや天然保湿因子が減り、水分を抱え込む力が落ちることで、表面から水分が逃げやすくなります。皮脂の分泌量も少なくなるため、しっとり膜が弱まり、「乾いているのにムレやすい」という矛盾した不快感に悩む方も多いのです。
加えて、更年期は血流やコラーゲン量も減るため、栄養が十分に届かず、粘膜や皮膚の回復力そのものが落ちてしまいます。そこに洗浄のしすぎや、合成繊維の下着、冷暖房による空気の乾燥といった日常の刺激が重なることで、乾燥はますます進行していきます。
更年期のデリケートゾーン乾燥は「ホルモンの変化による土台の弱まり」と「生活環境からの刺激」の両方が重なって起こるもの。だからこそ、“いたわるケア”を取り入れることが、これからの心地よさを支える鍵になります。
毎日のやさしいセルフケアで変わる

デリケートゾーンの乾燥は、特別なことをしなくても、毎日のちょっとした工夫でぐっと和らげることができます。大切なのは「洗う」「潤す」「守る」のシンプルな3つの流れを習慣にしていくことです。
まず意識したいのは、洗い方。一般的なボディソープは洗浄力が強く、必要な潤いまで奪ってしまうことがあります。そこでおすすめなのが、弱酸性で保湿成分を含んだデリケートゾーン専用ソープ。ふわふわの泡でやさしく包み込むように洗うことで、清潔を保ちながら乾燥や刺激を防ぐことができます。
洗ったあとは、顔や体と同じように保湿を忘れずに。お風呂上がりに専用のジェルやクリームをひと塗りするだけで、肌のつっぱり感やかゆみを和らげ、ふっくらとした感触が戻ってきます。「デリケートゾーンにもスキンケアを」という発想をもつだけで、日々の快適さが変わっていくはずです。
さらに、身につけるアイテムも大切です。締めつけの強い下着や化学繊維は摩擦やムレを生み、乾燥を悪化させてしまうことがあります。コットンやシルクなど、通気性がよくやさしい素材を選ぶことで、肌への負担はぐっと軽減されます。
こうした小さな積み重ねは、見過ごしがちな不快感を和らげるだけでなく、自分のからだを大切にするという気持ちにもつながります。毎日のやさしいセルフケアは、デリケートゾーンの乾燥対策であると同時に、これからの自分を心地よく整えていくための美容習慣でもあります。
「私を大切にする」きっかけに
更年期は、からだが新しいステージへと変化していく時期。
デリケートゾーンの乾燥ケアは、単なる対処法ではなく 「これからの自分をいたわる美容習慣」 として考えると、気持ちまで軽やかに整っていきます。
※ご注意 本記事は、生活習慣に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の医療的効果や症状の改善を保証するものではありません。内容のご利用にあたっては、あらかじめご了承ください。
美容皮膚科・美容外科医
1999年東海大学医学部卒業、順天堂大学大学整形外科医局入局。2005年より順天堂大学麻酔科医局入局し、ペインクリニックで整形外科関連の痛みに関する治療を学び、麻酔科標榜医取得。







