産後にふと気づく体の「ニオイ」その理由と向き合い方
産後ににおいを感じやすくなる背景
出産後、女性の体はホルモンバランスが大きく揺らぎます。エストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンが急激に低下すると、皮脂分泌のコントロールが乱れ、酸化した皮脂のにおいを感じやすくなります。さらに、授乳に関わるプロラクチンやオキシトシンの分泌によって発汗量が増え、日中の抱っこや夜間の寝汗が体臭を強める要因にも。
そこに重なるのが、睡眠不足による自律神経の乱れ。夜間授乳や生活リズムの変化で交感神経が優位になりやすく、口の乾きから口臭が強くなったり、疲労やストレス由来の独特なにおいを感じやすくなったりします。
また、ホルモンの低下は粘膜やフローラにも影響を与えます。デリケートゾーンでは自浄作用やpHバランスが乱れやすく、これまでと違ったにおいを意識するケースも少なくありません。こうした複数の要因が重なり合うことで、産後の女性は「以前とにおいが違う」と感じやすくなります。
時期ごとの体臭の特徴
退院直後〜2週間
出産を終えた直後の体は、水分や老廃物を排出しようと活発に働いています。そのため汗の量が増え、寝具やパジャマににおいが残りやすくなります。さらに「悪露(おろ)」と呼ばれる出血が続くことで、デリケートゾーンのにおいを意識しやすい時期でもあります。
1〜3か月頃
授乳のリズムが軌道に乗り始める一方で、夜間の授乳やまとまった睡眠が取れない日々が続きます。睡眠不足から口の渇きによる口臭が強くなったり、頭皮の皮脂が酸化してにおいを感じやすくなったりすることも。赤ちゃんを抱っこする時間が長くなるため、ワキや背中に汗ムレがこもりやすいのもこの時期の特徴です。
3か月以降〜卒乳期
少しずつ生活リズムが安定してくると、体臭の変化も落ち着いていきます。ただし、季節の気温差や運動不足が重なると、再び汗や皮脂のバランスが乱れてにおいが強まることもあります。気になる時は、日々のケアでリズムを整えることが大切です。
毎日の暮らしでできる、やさしい体臭ケア

産後の体臭ケアは、強い洗浄よりも「やさしい習慣」を続けることが大切です。入浴では泡で包むように洗い、頭皮はしっかり乾かして清潔に。デリケートゾーンは専用ソープと保湿で、下着は通気性のよいものを選びましょう。
さらに、内側からの整えもポイント。ヨーグルトや納豆などの発酵食品、ビタミンB群や鉄を含む食材を意識的にとり、ベビーカーでの散歩や軽いストレッチで汗腺を動かすと、汗の質が整いやすくなります。小さな積み重ねが、産後のにおいをやわらげ、心地よい毎日へとつながっていきます。
産後のにおいは、がんばっている体からのメッセージ。恥ずかしいことではなく、むしろ母になった証ともいえるものです。
毎日の小さなケアを重ねることで、心地よい日々が戻ってきます。
――自分をいたわる時間が、心も肌も潤し、新しい自分との出会いへつながっていくのです。
※ご注意 本記事は、生活習慣に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の医療的効果や症状の改善を保証するものではありません。内容のご利用にあたっては、あらかじめご了承ください。
美容皮膚科・美容外科医
1999年東海大学医学部卒業、順天堂大学大学整形外科医局入局。2005年より順天堂大学麻酔科医局入局し、ペインクリニックで整形外科関連の痛みに関する治療を学び、麻酔科標榜医取得。






